人権コラム

  • 2023年08月07日
    水泳界のアスリートがLGBTQ+の情報を発信

世界水泳選手権2023福岡大会が、7月14日から30日にかけて福岡市にて開催されました。内外から多くの方が観戦に訪れ、大会関連の企画やイベントも数多く実施されていましたが、今回の大会を通じて、大規模なスポーツ大会が秘める発信力の高さを実感するできごとがありました。

私が所属する「プライドハウス東京」は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、スポーツとLGBTQ+に関する情報発信や、誰もが自分らしく活躍できるスポーツ界と社会の実現に向けて活動を進めている団体です。国内外からさまざまな方が集まる大規模な国際スポーツ大会は、世界中でニュースが配信されアスリートの発信力も高まる時期です。今回、世界水泳選手権2023福岡大会にあわせて、「プライドハウス福岡」という期間限定の企画を立ち上げ、LGBTQ+に関する情報発信や居場所づくりに取り組みました。

大会会場では福岡市との共催ブースを出展し、LGBTQ+に関するガイドブックを配布したり、LGBTQ+とスポーツに関するパネル展示を行いました。また、国内外の水泳オリンピアンを招いたトークショーを開催し、今大会で銀メダルを獲得したアーティスティックスイミングのアメリカ代表ビル・メイ選手、バルセロナ1992オリンピック200m平泳ぎ金メダリストの岩崎恭子さん、東京2020大会にも出場した水球元日本代表の志水祐介さんらを迎え、「プライドトークショー 〜水泳界からLGBTQ+インクルーシブな社会を目指して」をテーマに、それぞれの体験をもとに語り合う場となりました。

岩崎さんが現役時代の頃、テレビでその姿を応援してきた世代としては、LGBTQ+とスポーツの多様性について、実感と共に語る姿はそれだけでも胸がいっぱいになりましたが、「私も学び、考える必要がある。大事なこと」という趣旨のコメントは、とても励みになる思いでした。また志水さんは、当時者だけじゃなくアスリート全員が協力して取り組むことが大切だというコメントを述べ、自分ごととして正面から捉えている様子もまた、心強く聞いていました。

驚いたのはその後の報道で、新聞やテレビ、ウェブ記事でこのトークショーの様子が多数紹介されたのです。スポーツを通じて高い知名度のある方々の、ポジティブな文脈の発信が、LGBTQ+やそうかもしれないと人知れず悩んでいる当時者の方、あるいは家族や友人の方々にも、きっと届いたのではないでしょうか。また、LGBTQ+にはそれほど興味がなくても、よく知るアスリートたちの語りをきっかけに、知る機会になった人もいると思います。今後もこうした機会をしっかり活かして、情報発信を進めていきたいと強く感じる機会になりました。

NPO法人Rainbow Soup 代表
五十嵐ゆり

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