人権コラム

  • 2023年12月27日
    職場から家庭・地域の広がりに期待

職場から家庭・地域への広がりに期待

小学校の先生をしている友人から、非常に興味深いお話を聞きました。小学6年生のクラスで、LGBTQという言葉を知っているか尋ねたところ、クラスの全員が手を挙げたそうです。そしてある子に、なぜその言葉を知っているのか聞いてみたら、「親が職場で研修を受けてきたことを、教えてくれたから」と、答えたとのことでした。また、子育てをしているレズビアンカップルが、保育園の送迎がスムーズにいくようにと、園長や先生にカミングアウトしたところ好意的に受け止めてもらえたそうで、他の親御さんからも「あの方達はきっとカップルだね」と思われていたことが、後に分かったそうです。その親御さんは、職場でLGBTQに関する研修を受けていた経験があり、二人の様子をあたたかく見守っていたようです。カップルの方々は、より一層安心して保育園や周りの親御さんと関わることができるようになったと、喜んでいました。

私の本業は、企業や自治体のLGBTQ施策をサポートすることで、具体的には社内研修やコンサル、教育用ツールなどをご提供していますが、職場での取り組みが、そのような形で学校や地域での理解に繋がっているとは、想像もしていませんでした。研修の中で、LGBTQやジェンダーに関する考え方の世代間格差についてご紹介すると、参加者の反応が良いので、最近は必ず話題にして、「本日の研修後、若い世代と話す機会がある方は、ぜひ彼らに聞いてみてください。もしかしたら、彼らの方が詳しいかもしれないので、よかったら色々と教えてもらいましょう」とお伝えするようにしています。実際に話題にしてみたという方から、やはり若い世代がしっかり知っていてびっくりした、というお話も伺ったことがあります。未来への希望を感じさせてくれます。

現在、同性パートナーシップ宣誓制度の導入自治体数は300を超え、人口カバー率で7割を超えています。また、2023年6月には性的マイノリティに関する理解を広げることを目的とした「LGBT理解増進法」が可決成立し、同性婚の法制化については、過半数が賛成という意識調査が数多く報告されています。なお「LGBT理解増進法」についてLGBTQ支援団体からは、差別禁止すら盛り込まれず実効力がない点などが批判されており、当時者に対する法的保護は今もなお不十分な状況です。また、首相秘書官や自治体議員による差別的な発言がなされたり、トランスジェンダーの方に対する誹謗中傷が激しさを増すなど、差別と偏見はまだまだ根強い状況と言わざるをえません。

2024年は少しでも状況が改善し、LGBTQの方も、そうかもしれないと思っている方も、また当時者ではない方も含めて、誰もが安心して暮らせる社会になってほしいと願うばかりです。


NPO法人Rainbow Soup 代表
五十嵐ゆり

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