人権コラム

  • 2024年10月18日
    カスタマー・ハラスメントを考える

職場のハラスメントは、セクハラ、パワハラ、マタハラそれぞれ法律が整備され、すべての事業主に防止対策をとることが義務となりました。これらのハラスメントは、当初は職場で働く人たちの間で起こることを想定したものでしたが、近年、職場外の人からのハラスメントとして、カスタマー・ハラスメントが問題になっています。
カスタマー・ハラスメントというのは、企業や自治体が提供するサービスの顧客・利用者からの常識を超えた迷惑行為のことです。
厚生労働省が2020年に企業を対象に行った調査によると、過去3年間のハラスメント相談のうち、パワハラは48.2%、セクハラは28.9%、それに次いで、カスタマー・ハラスメントが19.8%と多く、企業の92%がカスタマー・ハラスメントに該当する事案があったと回答しています。
とくに、小売業、運輸業、飲食業、観光業など顧客・利用者と接することの多い業種や自治体窓口で、大声で恫喝する、罵声を浴びせる、土下座をさせる、不当な金銭要求をする、長時間電話でクレームを言う、揚げ足をとる、SNSやマスコミに悪評を流すと言って脅す、などの事例が挙がっています。カスタマー・ハラスメントは、これらの業種に共通の「悩みの種」となっているようです。
こうした行為は、対応する従業員を疲弊させ、恐怖や不安を与えます。そこから心身の不調をきたし、休職や退職に至る例もあるのです。また企業にとっても大切な人材を失い、他の顧客にも悪影響を与えかねません。
もちろん、製品やサービスに関するクレームがすべてカスハラになるわけではありません。「お客様は神様です」をモットーとしているからといって、無制限に要求に応じる必要はないのです。正当な要求を超えた、過剰な要求や悪質な行為には、企業も毅然として対応することが大切です。
従業員が安心して働くことができる環境を作っていくためにも、カスタマー・ハラスメントに対する正しい理解と対応方針をしっかり作って、働く人を守る姿勢を示すことが、企業に求められています。

NPO法人 福岡ジェンダー研究所
副理事長 横山美栄子

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