人権コラム
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2021年01月26日
情報の取り扱いにご注意!
RKB朝のラジオ『櫻井浩二インサイト』で毎週火曜、コメンテーターをしています。2021年の初回は、ニュースの見方について語ってみました。
「メディアは信用できない」「ネットの方が情報がある」
今のメディアの体たらくでは、そう言われても仕方ないのですが、ネットにもいろいろありますね。作家の百田尚樹さんが問題発言をした時、ある新聞がそのニュースに本人の反論コメントを付けて載せました。
しかし、ネット上では記事がバラバラに読まれるので、「問題作家の言い分だけを載せている」と勘違いし、攻撃する人がいました。意図してもいないのに炎上したその新聞、かわいそうでした。この例を挙げ、「感情的になるのに、右派も左派も関係がない」と申し上げました。
また、「スキ」と「信用できる」を混同している人が多いので、「信用してはいけない人の見分け方」を具体的にお話ししました。
(1)内閣支持率の調査や、選挙の開票は「不正だ」と主張している人
記者歴30年、組織的な不正開票なんて見たこともありません。公務員がそんなことをしたらクビです。間違わないよう必死に作業しているのに、失礼な話です。
内閣支持率調査ですが、目的の第一は「世論の正確なトレンドを報道機関自体が知るため」。世論誘導するため数字を操作したのでは本末転倒、何の意味もありません。
(ちなみに、統計学的なルールで抽出した1000人規模の調査は、現実との誤差が3%程度に収まります)
(2)「メディアは左翼に支配されている」と信じている人
記者歴30年、そんな報道機関を見たことがありません。たとえ左翼政党の政権ができても、私たちは今と同じように権力監視をするつもりなのですが……。
しかし、実際に先日、こんな街頭演説を天神で聞きました。「在日の人は様々な特権を持っている」という妄想を信じてしまった方々でした。自分たちなりの正義の御旗を立て、ひとの人権を攻撃する人たちは、ニセ情報を真に受けてしまう、ある意味素直な人が多いようです。
憤りや反発、不信といった「感情」は、ものを見る目を曇らせます。それは、立場や政治信条とは関係がありません。
独自に情報を集めるのは大事ですが、「自分の感情や主張に"都合のよい情報"は、逆にちょっと距離を置いて見るようにしましょう」と番組で申し上げました。
実は、これ……
情報の扱いを間違わないように報道機関が常々自分への戒めとしている、最大のノウハウなのです。
RKB毎日放送 デジタル報道担当局長 神戸金史